Pale Blue(以降「当社」)は、東京科学大学や早稲田大学らによる超小型衛星GRAPHIUMに向けた水エンジン(水推進機)の電気モデルを受注し、連携を開始しました。同衛星には小型・高感度のガンマ線観測装置 INSPIREが搭載され、全天のモニタ観測をするほか、副ミッションとして空力を用いたフォーメーション・フライト技術の実証を予定しており、水推進機の使用が検討されています。引き続き、大学や研究機関との連携も強化していきます。
地上には約300種類の元素が知られていますが、金やプラチナ(レアメタル)が宇宙のどこでつくられるのか、いまだに謎に包まれています。最も有力な説は「キロノバ」と呼ばれる現象で、中性子星が合体する爆発現象と考えられます。キロノバは宇宙のいつ、どこで起きるか予想ができませんが、金やプラチナに特有なX線やガンマ線を放出すると予想されます。一方で、これまでのガンマ線観測は米国、欧州の数トン以上の大型衛星で観測視野も狭く、キロノバのような突発天体の観測には不向きでした。
超小型衛星GRAPHIUM は主ミッションとしてキロノバなどの突発ガンマ線観測をかかげ、宇宙におけるレアメタルの起源を探査します。一度に全天の1/4をモニタする広視野かつ高感度のX線ガンマ線カメラ INSPIRE を搭載し、50キログラム級の衛星にもかかわらず大型衛星を凌駕する性能をもちます。さらに、副ミッションとして、将来の宇宙工学を見すえた技術実証を行います。具体的には、空力を積極的に用いたフォーメーション・フライトの実証実験で、その制御エンジンとなる推進機も、エコで地球にやさしい水推進機の使用を検討しています。
GRAPHIUM衛星の開発は、JST戦略的創造研究推進事業ERATO「片岡ラインX線ガンマ線イメージング」プロジェクトの一環として実施しています。本研究プロジェクトでは、「元素固有の色」であるラインX線ガンマ線のイメージング技術と概念を通じ、宇宙から医療を貫く新しい学問の潮流を創成することを目的としています。
私たちは軌道上で衛星を変形させる可変形状機能を「ひばり」衛星で実証し、さらに空力を利用した軌道制御へ応用しようとしています。GRAPHIUMでは水推進機と空力によりフォーメーション・フライトを低リソース・低コストに実証することを試みますが、これによって超小型衛星にとっての軌道制御のハードルが下がり、今後の超小型衛星ミッションがさらに多様化することを望んでいます。
GRAPHIUMは、理学的にも工学的にも、超小型衛星としては非常に充実度が高いミッションを実施する計画です。その中のフォーメーション・フライト実験は、推進システムが必要なため以前は敷居が高いものでしたが、水推進機技術の発展により超小型衛星でもできるようになりました。空力と組み合わせた軌道制御は工学的には面白い実験ですので、実現が楽しみです。
宇宙科学は衛星ともに大型化し進化してきましたが、同時に科学が本来もつべきフットワークの軽さや柔軟な探求心が、徐々に失われつつあります。ところが現在、世界中では年間300基を超える小型衛星が打ち上げられ、宇宙への敷居が急速に下がりつつあります。GRAPHIUMは、小型衛星を基軸として先端科学や宇宙工学に切り込むユニークなプロジェクトで、今後のモデルパターンとなると期待しています。
先端科学や宇宙工学の新たな世界を切り開くGRAPHIUMは、「人類の可能性を拡げ続ける」という当社のミッションとの親和性も高く、この度ご一緒できることを大変嬉しく思います。小型衛星技術のさらなる発展と、宇宙ビジネスの活性化に貢献できるよう、大学や研究機関との連携を強化し、イノベーションを加速させていきます。
早稲田大学「早稲田大学と東京科学大学、超小型衛星でPale Blueと産学連携を開始」:https://www.waseda.jp/inst/research/news/78883
Pale Blueは「水」を推進剤とした推進機を3Uキューブサットから700kgの衛星まで、幅広いミッションに向けて提供しています。東京大学 小泉研究室の4名による2020年の創業後、様々な電気推進を開発し、世界中の企業・大学に納入しています。Pale Blueは推進機に技術革新を起こすことで、宇宙産業のコアとなるモビリティを創成し、人類の可能性を拡げ続けます。
株式会社Pale Blue 広報担当:奥原
メールアドレス:pr@pale-blue.co.jp